2020年働き方改革はどうなる?
中小企業の残業時間の制限も2020年4月からスタートしますね。
残業時間の制限や有給休暇取得義務について働き方改革と言われて数年経ちますが、あなたは働き方改革の目的や方向性を理解していますか?
この記事では、2016年から始まっている働き方改革について、そもそもの目的や、2020年以降どうなっていくのかについて解説します。
働き方改革の方向性を踏まえ、あなたの今後についても考えていただければと思います。
Contents
働き方改革とは
働き方改革は、大企業では昨年度から始まっているところもあります。
働き方改革には、大きな4つの柱があります。
1つずつ解説します。
残業時間の制限
残業時間の制限は、大企業では2019年4月から始まっており、中小企業は2020年の4月から始まります。
これまでは、残業時間は45時間以内にするという運用ルールはありました。
しかし、今後は法律で規制されることになります。
法律を破った企業には罰則が与えられますので、強制力があるものなります。
有給休暇の取得義務化
有給休暇の取得義務化は、2019年4月から実施されています。
企業は労働者に対して、1年に5日以上の有休休暇を取らせるという義務です。
企業によっては、仮に夏季休暇を5日とった場合も、1日だけ夏季休暇扱いにして残りの4日を有給休暇扱いするなどして、無理やり5日を捻出するといった実態があるようです。
終業から始業までの休息
終業時刻から始業時刻までには11時間以上おきましょう、というものです。
これは法規制ではなく努力義務にとどまっており、厳密に実施している企業は多くないようです。
同一労働同一賃金
企業は、正社員も正社員でない人も、同じ仕事をする労働者に対しては同じ給料を支払うことを求める法律です。
この法律は、2020年4月から施行されます。
大企業での働き方の変革の状況はどうなのか
実際に働き方改革に取り組んでいる大企業の状況はどうなのでしょうか。
従業員数1000名未満の500社に聞く働き方改革法実態調査というリサーチからご紹介します。
働き方改革による労働環境の改善を実感したと答えたのは、約31%と記載があります。
つまり、約7割は変わっていない、または悪くなってると感じているということです。
これは、働き方改革自体が、基本的には労働時間を削減しようとする方向であることが要因と考えられます。
減った労働時間はどこにいったのか
労働時間が減ったとしたら、削減された労働時間はどこにいったのでしょうか。
減った労働時間について解説します。
単純に仕事が減った
働き方改革によって仕事が減ったということは良いことですね。
仕事が減った企業は、働き方改革の効果があったと回答するでしょう。
管理職に移転している
あるアンケート結果によると、残業時間が減ったと回答しているのは全体の30%ほどですが、管理職の残業時間が減ったという回答は30%以下でした。
管理職では「変わらない」「むしろ増えた」という割合の方が多くなっています。
部下の残業時間削減のために、自分の残業時間を増やしている管理職が存在しているということです。
実際に、管理職の土日出勤が非常に増えている実態もあります。
平日は、部下に気を遣わせずに早く帰らせるために、管理職も率先して早く帰るものの、その分土日に出社して仕事をするケースもあるようです。
下請けに移転している
親会社が徐々に残業規制されていることで、子会社や下請け会社に仕事を外注して、単純に仕事が移っているということがあります。
大企業から残業規制が始まっていることで、労働時間が減ったようにも見えますが、実は下請け会社の仕事が増えているという可能性があります。
2020年4月からは、中小企業も残業規制という形で労働時間を削減させられます。
すると、下請け会社や中小企業も仕事が溢れ、大企業側に仕事が戻ってくるということが起きる可能性も考えられます。
職場の交流がなくなった
実は、無駄と思われるチームの人との交流や雑談の時間に仲良くなっていた部分があります。
職場内の助け合いが減り、職場がギスギスしてしまったりします。
また、困っている同僚を助けたら自分の時間が取られてしまうということで、人を助ける余力がなくなってしまう悪循環が生まれ、結果的に組織力が低下することにもなります。
単純に時間を減らすというやり方は、危険を孕んでいるとも言えます。
減った残業代はどこに行ったのか
残業時間が減るということは、残業代が減ると言うことです。
その減った給料はどこに行ったのでしょうか。
ほとんどが会社の利益になっている
日経新聞の調査によると、減った給料を従業員に還元してない企業が約50%、検討中が約22%、従業員に還元したというのが約14%です。
つまり、ほとんどの企業が、減った給料を会社の利益としているということです。
労働時間を強制的に減らすことは、労働者に負荷がかかります。その上さらに給料も減っているという現状があります。
なぜこんなことをしているのか、と考えてしまいますよね。
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労働時間の削減は手段であって目的ではない
現状の働き方改革は、「早く帰ること」「休みをとること」という形式にこだわり、労働時間を削減すること自体が目的になってしまっていると言えます。
本来の目的は、生産性の向上
働き方改革の目的は、生産性の向上であったはずです。
早く帰ることや、形式上の休暇日数を満たすことではないのではないでしょうか。
ツールをつかって小手先の時間短縮はできるかもしれませんが、それは本質的ではありません。
強制的に労働時間を減らすことによって、少ない時間の中で業務をこなさなければならず、効率的に業務を行い、生産性があがる、という考え方もあるかもしれません。
しかし、強制的な時間制約では生産者は向上しません。
まず、無駄な業務を削減する必要があります。
無駄な業務は、たくさん存在しています。
一番大きいのは、日本独特の厳しいリスク管理規制です。
日本の風土とも言えますが、少しのリスクに対して多大なチェックを行う義務が膨大に発生しており、効果性の少ない業務が多いと言えます。
リスク管理規制を緩和しない限り、業務は削減できませんし、生産性も上がりません。
日本の厳しい法規制や文化を変えてかないと、企業側がリスク取って業務を減らすということはなかなできませんよね。
つまり、労働時間を削減したからといって、生産性が伸びるわけではないということです。
文化から変えていかないと、根本的な解決にはつながっていかないでしょう。
そもそもなぜ生産性の向上が必要なのか
そもそも、なぜ生産性の向上が必要なのでしょうか。
根本には、日本は人口減少によって生産労働人口がどんどん減っていくことがあります。
労働人口が減ると、人手不足になりますよね。
そこで、1人当たりの生産量を増やすために、生産性を向上しようという流れになっているのです。
仕事漬けサラリーマンの大量生産
労働時間の削減と合わせて、今推進されているのは、副業推進です。
国は、労働時間を減らして副業を推進することで、1人当たりの労働力が増え、労働力を確保できるだろうと考えているのではないでしょうか。
労働人口の不足を補うため、労働時間を減らし、早く帰って副業をやらせる。
これでは、仕事漬けのサラリーマンが大量に生まれることになりますよね。
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生産性向上によるIT投資需要の喚起
政府がやることは、投資としてお金を使わせるためにやっていることが多くあります。
現在、企業の新しい戦略の投資は、ほとんどがIT投資です。
おそらく新しい投資のテーマは「生産性向上」で、企業内の生産性向上に関するツールを導入したり、システムを刷新したりすることでしょう。
働き方変革や生産性向上は、IT投資などの投資を促すためにやっているのではないのかとも推測できます。
働き方改革の現状と今後を考えると、やはりこのままではサラリーマンは仕事漬けの人生が待っているでしょう。
このサイクルから自ら抜け出していかないと、サラリーマンの人生は暗いかもしれません。
事実を踏まえながら、あなたも今後について考えていただえければと思います。